ファミコンから始まり、アーケードやゲームボーイやスーパーファミコン、さらにはPCエンジンやメガドライブと、実に多種多用なハードへと意欲的に新作を発表し続けていた『悪魔城ドラキュラ』シリーズだが、なんと1993年にはX68000というパソコンにまで進出していた。
本作はX68000という、プレイできる人がこれまでの作品よりもかなり限られるハードで発売されたにも関わらず当時のファンからは絶大な支持を受け、今でもこれをシリーズ最高傑作だと称える人が多い『悪魔城ドラキュラ』のプレイステーション(PS)移植版である。
しかしパソコンというハードの関係上、当時はプレイしたくてもできなかったというファンが多く、それから数年後に「過去のゲームの完全移植は当たり前」という、PSとSSの2強ハード全盛期の時代になってからは、コナミへ移植希望を訴えるファンの声が最も多く届けられたのが本作であったらしい。
そのファンからの熱烈な声に応える形で、本作はPSにて発売されることとなった。
ちなみに『悪魔城年代記』というタイトルは当時シリーズ化を予定していたらしく、このタイトルのもとでファンからの希望が多い旧作品の移植を推し進めていくつもりで用意されたものらしい。
しかし、今作の売り上げはコナミが期待していたよりも遥かに芳しくなく、結局は本作だけで『悪魔城年代記』シリーズは終了という、なんともお粗末な結果となってしまった。
そしてこの『悪魔城年代記』こそが、現在の悪魔城シリーズ統括プロデューサーであるIGA氏のプロデューサーとして担当した初作品でもある。
果たして、その出来は……詳しくは後述。
もともとの移植元であるX68000版の『悪魔城ドラキュラ』は、シリーズ一作目であるファミコン版初代『悪魔城ドラキュラ』のアレンジであり、スーパーファミコン版に続いてのリニューアルとなった。
そのため、主人公は例によって「シモン・ベルモンド」であり、当然のごとく共に戦ってくれる仲間などは存在しないので、寡黙にたった一人でドラキュラ討伐へ向かうという、シリーズの原点に立ち返った内容。もちろん難易度は高め。
それでもゲームバランスの調整は悪魔城伝説並みによく練り込まれており、やればやるほど味が出るスルメゲー。
ステージ構成やキャラクターのグラフィックも当時としてはかなりの高レベル技術でまとまっており、現在でも見劣りすることなく充分通用するのではないだろうか。
比較的近年に発売されたソフトではあるが、現在ではなかなか入手できない模様。
発売前宣伝の極端な少なさと、やけに高めの価格設定、そして後述する音飛び返品問題なども災いしてか、あの『月下の夜想曲』で人気を博した小島文美イラストを再び採用したにも関わらず市場にはあまり出回らなかったようで、中古でもほとんど見かけることがない。
ピンク髪のバンパイアハンター
今作はX68000版の忠実移植に加え、新たに難易度を抑えたアレンジモードが追加されている。
オリジナル版は難易度が非常に高いため、PSの『月下の夜想曲』からドラキュラシリーズのファンになったという人たちの中には純粋なアクションゲームは苦手だという人たちも多かったこともあり、そのようなファンへの救済措置として簡単にクリアできるモードが用意されたのである。
しかもアレンジモードでは『月下の夜想曲』で好評だった小島文美イラストのデザインでシモンとドラキュラを新規に描き起こし、楽曲もアレンジ版で収録するというオマケつき。
…が、これがオリジナルのX68000版ファンには大不評。
特にシモンのド派手なピンク色の長髪がゲーム全体の雰囲気とズレていることや、前半ステージの楽曲があまりにもオリジナル版からかけ離れたアレンジになってしまっているあたりに次々と不満噴出。
ならば「アレンジ版が嫌ならオリジナル版だけをやればいいじゃないか」と言うことになるのだが、これはこれでまた問題発生。
原作であるX68000版をプレイしたことのあるファン曰く、オリジナル版を忠実に再現していない部分があまりにも多いらしい。
例えば…メディウサヘッドの飛ぶ軌道が違うとか、アイテムの出現条件が違うとか、最高難易度である6周目の隠し要素が足りない…等、ほとんどは重箱の隅をつつくようなものばかりではあるようだが。
ちなみに管理人自身は原作をプレイしたこと自体ないので、この辺りの違いはよくわからない。
しかし、それよりも遥かに重大な問題がこの後に発生することになる。
こちらは原作をプレイしていたかいないかに関わりなく、全ての購入者にとって関係のある問題だったにも関わらず、コナミ側の対応があまりにもぞんざいなものであったために、ここで多くの旧作ファンが昔とは変わり果ててしまったコナミに見切りをつけたと言われている。
そのような現象は確認できません
X68000版は楽曲の面でもファンからの評価が非常に高い。
ハードの性能に合わせて三種類の音源に対応しており、環境さえ整っていれば非常に素晴らしいBGMを堪能できるようになっていた。
しかも楽曲は当時のコナミの鉄則通りに名曲がズラリと勢揃い。
PS版『月下の夜想曲』の初回版に付属していた「悪魔城ドラキュラ ミュージックコレクション」のCDに数曲収録されていたので、オリジナルのX68000版を知らない人でも、この作品の楽曲の素晴らしさは結構認知されていた。
で、前述したように移植版である本作にはオリジナル版の楽曲をアレンジして収録したモードと、X68000版の三種類の音源全てのバージョンを収録したオリジナルモードが存在するため、この点は多くのファンの興味を大いに駆り立てるものとなり、移植を希望していたファンにとっては正にこの上ない吉報だったのである。
…しかし、いざソフトが発売されて期待に胸を膨らませながらプレイしたファンの多くは、あまりにも不可解な現象に首をかしげることになった。
それこそが今作の最大の問題点と言われ、ユーザーとコナミの亀裂を絶望的にした、
である。
とにかくやたらとゲーム中にBGMが音飛びしたり途切れたりするのである。
これはプレイステーション本体の型が古い・新しいに関係なく、ほとんど全てのソフトで発生し、この作品のウリである楽曲に多大なる期待を抱いてプレイしていた多くのファンにとっては、むしろ多大な不快感を受けるものとなった。
しかし、当時のコナミはこの音飛び現象を全面的に否定。
何度ファンからの苦情があっても「そのような現象は確認できません」の一点張り。
だが、あまりにも苦情が多くなってきたために、数ヶ月経ってからようやくコナミは返品・交換に応じることになったのだが、この時の対応がまた二次問題を追加発生させる。
なんと返品交換された改修版ソフトでも音飛びが発生するという、信じられない程にどうしようもない対応。
一度ならず二度までも。ファンの怒りは頂点に達し、この件に関してもファンは苦情をコナミに叩きつける。当然である。
しかし今回もコナミはこの問題を「これ以上の対応はできません」として抹消。
完全に購入者を馬鹿にしているとしか思えない、全くもって真摯さが伝わらない対応を平然とやってのけたのである。
この一連の騒動の背後にIGAプロデューサーがどう関わっていたか定かではないが、常識的に考えるならばプロデューサーという立場からして、この件に関して何らかの声明を出すべきであったのに、これまた何も「なかったこと」にしてしまったことにより、ファンの要望に応える形で発売となった『悪魔城年代記』は、結果的には当初の目的とは正反対にファンの失望を招くという、最低最悪の結末を辿ることになってしまった。
そんなわけで、ゲーム中のBGMは非常に残念な結果となってしまったわけだが、唯一の救いとしては本作のサントラが発売されていることである。
そのサントラ自体は非常に豪華な内容。
X68000のオリジナル版発売当時には、ゲーム内で選択できる3音源の全てを収録したサントラは発売されなかったので、今作のサントラで初めて全ての音源による楽曲が聴けるサントラが発売されることになったのは、この作品のファンにとっては狂気乱舞するほどに喜ばしいことであった。
当然、音飛びの心配もない。当たり前か。
もちろん新要素であるアレンジ版の楽曲も収録されているが、前半3ステージの曲は原曲の面影がほとんど感じられない程に凄まじくアレンジされているのに対し、なぜか後半ステージの曲は原曲に忠実なアレンジばっかりになっている。
その点についてサントラに付属している楽曲製作者のコメントを読むと、かなりの短期間で全曲のアレンジをやらなければならなかったと書かれているので、後半の楽曲は派手にアレンジする余裕がなくなっていたであろうことが容易に窺い知れる。
まぁ、あの「Wicked Child」の前奏部分で延々と続く「でーででーでででゅーでゅでゅーでゅー」みたいな辟易させられるアレンジを、同じように後半の楽曲でもやられたらさすがにヴン投げたくなるので、これはこれで良かったのかもしれないが。
現在でも入手は簡単な方だと思われる。
こちらなら音飛びに怯える恐れはないのでオススメ。こんなオススメ方されるゲームサントラもどうかと思うが。
レベルアップ?なにそれ?
PSの『悪魔城ドラキュラ』と言えば、やはり真っ先に挙がるのは『月下の夜想曲』であろう。
この作品が従来のシリーズから華麗なる転身を遂げたことにより、ドラキュラシリーズは新たなファン層を獲得することに成功したのは周知の事実。
それゆえ、そもそも今作は旧作ファンの期待に応える形で発売されることになったとはいえ、当然のごとく『月下の夜想曲』から入ったファンを意識しているのは明白であった。
全体にゲームの難易度を抑え、小島文美イラストに合わせたデザインでシモンやドラキュラを描き直したアレンジモードを収録したことがその最たる証拠ではあるが、いくら難易度を抑えたとは言っても、原作となるX68000版はシリーズでもかなり難易度高めの作品である故に、やはり『月下の夜想曲』的な難易度を期待して買った新規ファン層にとっては、アレンジモードでも充分すぎる程に刺激が強すぎたのではなかろうか。
ちなみに管理人は狼女が大嫌い。初プレイ時にはヴン投げる寸前まで追い詰められた。
でも結局は買ったその日のうちにクリアしてしまい、一緒に買いに行った妹から「は?もう終わらしたんかアンタ。キモいなー…」と、マヂでドン引きされた苦い思い出が鮮明にフラッシュバックナウ。
個人的感想と思ひ出
この作品は楽曲の良さを月下に付属のCDで事前に知っていただけに、楽曲目当てでメッチャ期待してた。
正直ゲーム内容自体はどーでも良かったのは内緒。
んで、もちろんアレンジ楽曲にも期待していたわけだが、これは既に紹介したように前半ステージのアレンジ曲がどれもこれも好きになれないものばっかりだったので、正直かなりガッカリだった。
でも、後半ステージの曲はオリジナル版に忠実ながらも、より重厚なアレンジが施されていたあたりが好印象だったのでプラマイZEROってことで。
悪評高い音飛びはステージ2と7で発生。多分ほとんどの人がここで音飛びしたんぢゃないかしら?
ステージ2はともかく、ステージ7の「Etude For The Killer」が音飛びするのは致命的だったんで、返品して新しいのと交換してもらおうかと本気で考えたけど、交換されて戻ってくるソフトはステージ4の「Bloody Tears」が音飛びするという、さらにとんでもない重症品だという情報を入手したので断念。今に至る。
ちなみに音飛び云々を抜きにしても、個人的にはあんまり好きになれなかった。なんでかしら。やっぱ狼女かしら。それともシモンのデザインかしら。それともパッケージに誇らしげに光る「IGAプロデュース」の文字かし(略)
主要登場人物
シモン・ベルモンド
今回も例によって例による寡黙な鞭振り主人公。
新たに髪の毛をピンク色に染め上げてハイセンスなスタイルを披露。
しかし、浮世離れし過ぎたそのセンスは一般社会にはあまり受け入れられなかったらしく、その数年後に『ギャラリーオブラビリンス』において召喚される際には、フツーの茶色い髪に染め直して現世に姿を一瞬だけ見せる。
ドラキュラ伯爵
今回も例によって例による悪の親玉。
そして例によって例による強さのまんまだが、今作では移動する時に発生する光の柱の中にコウモリを纏っており、これは個人的にスゲーカッコ良い演出だと思う。
本人も気に入っているのか、その後の作品では結構多用してる気がする。
死神
今回も例によって例によるドラキュラの腹心。
シャフトの脅威に怯えることもなく、実にのびのびと過ごしている模様。
そのせいか少々気合いが足りず、これまでの純アクションシリーズの時よりも強さは控えめ。
トレードマークの大鎌は、取っ手の部分がヘンテコな凸凹した形に曲がっているが特に気にしていない。
狼女
ウザ。
人形
おまえはだれ。
偽シモン
参上しないらしい。